サンソスウ

アヤスミスのブログ

THE ILLUSTRATOR 生頼範義

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もう終了してしまったのですが...。

生頼範義|みやざきアートセンター企画展2014の図録を通信販売で購入し、一昨日手元に到着。ぜひ奇跡を体感したかったけれども、訪れること叶わず。でも、図録の3次募集には間に合いました。


緻密な描写と、完璧でダイナミックな構図と色使い、「この世界に一歩踏み込んだら...。」というワクワクゾクゾク感を掻き立てられる作品ばかりで、映画・書籍・ゲームソフトの外装などのための「イラスト」という意味では、当然「THE ILLUSTRATOR」の称号が相応しい事間違いないのだが、もうはっきり絵画と呼んでしまいたい程のクオリティ。ミュシャだって、要はイラストレーターじゃないの?何が違うの?と軽く混乱したり...。本当に現物を見たかった。

 

この図録を読んで驚いたのが、私が子どもの頃持っていた学研の人体の図鑑のイラストは、生頼先生が同社の家庭医学事典のイラストを書くにあたり取材した時のデッサンが元になっていると言う事で、非常に感動、そして納得。
少しSFっぽい不思議な感じのテイストで、特に色彩が独特な、忘れられない一冊でした。この事を知っただけでも、図録を手に入れたかいがあった...。


以下、余談。

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普段「絵」にたいして興味を持たない人でも、生涯のうち絶対どこかで生頼先生のイラストに触れているはず(昭和育ちの人は特に)。
CG技術が今のように進化していなかった時代は当然手描きしかないわけで、クオリティ高いアナログ絵というのは今よりも巷に溢れ、結構普通の光景なものだから、その凄さに少しは気がついていても、では誰が書いてるのか?っていう事までを気にしたりするかといえば、多数の人はあまりなかったのではないかと思う。たぶん。

例えば、映画館の上映告知の看板は職人さんの手描きだった。私は割と看板絵だけでも見るのが楽しみだった子どもで、当時暮らしていた土地から一番近い繁華街に数館あった映画館のうち一館に一体何があったのか、ある時からものすごく下手な看板絵になった。ああいうのは上手いのが当たり前だと思っているから、下手な看板絵が堂々と存在している事の衝撃は凄かった。まるで違う映画をやってるようにも見えた。


生頼先生の図録を眺めていたらあの看板絵の衝撃を思い出し、恥ずかしながらイラストレーションの重要さというのを、今になってきちんと理解したように思う。

絵だけではなく、レタリングもそうだし、スーパーのPOPですらも誰かの手描きで、誰かが描いた上手なものを見れば、自分にも出来るかも?と、真似してみようと試みる子どもは一定数いたし、小学校の先生だって、学級通信やちょっとした賞状に書く手描きイラストやレイアウトが上手い先生は児童たちに人気があった。

 

現在の映画館はどこにいっても同じポスターが貼られているし、素人だって子どもだって、PCを扱えれば、一応綺麗な資料やPOPを作る事が出来る。特に商業面において、質の均一化が成されている事は凄く良い事なのかもしれないが、一方で、各々が好き嫌いとか善し悪しとかを選択するとか、自分の手で真似でもしてみようという機会が少なくなったという気がして、それは良い事なのかどうなのだろうか。という気はする。

別にCGが嫌いなわけではない。でも、生頼先生の絵のような圧倒的なものに誰もが触れる機会、そういうものが少なくなってしまったのは正直寂しいと思う。

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CGイラストも一般的になった今、人の手「だけ」で創られた凄いもの達に日常的に触れていた時代って実はとても贅沢だったなあ。と感じるとともに、創っていた人達の事を、子どもの頃にもっと知りたかった、そういう機会なかったのかなあ、惜しいなあ。なんて思ったのです。