小林カツ代さんが亡くなってしまった。
どうも具合が良くなかったのもあり、早く寝ようとTVはつけずに、ネットニュースの見出しだけチェック。
そうしたら料理家の小林カツ代さんの訃報が目に飛び込んできた。
非常にショックである。寝るどころじゃない。
カツ代先生のレシピが掲載されている「KATSUYOレシピ」というサイトに、
ユーザーに向けたお知らせが掲載されている。
この中にあった、
生前、「私が死んじゃっても、美味しい私のレシピは永遠にそこの家の家庭料理として残るのが嬉しいわね」と、大好きな珈琲を飲みつつ、笑いながらスタッフに話をしていました。
このエピソードにしんみりしてしまう。
私の母は料理が上手く、味だけではなく材料の切り方や盛りつけの見た目も美しいのだが、自分の子どもにそれを伝えたいとかそういう欲のようなものは全くなく、むしろ「キッチンが散らかるから何にもしなくていい。」なんなら「必要な時に自分で覚えるから大丈夫でしょ。」という人で、10代後半で突発的に親元離れた私は一応の料理は出来るが、難なくこなすというには程遠かった。
それで本屋に行って、数多ある料理本の中で目に留まったのがカツ代先生の本だった。
それまでカツ代先生の事は知らなかったけど、何故かこの本で勉強しようと思ったのだった。
これはもう廃盤になってしまったようだ。
レシピは永遠だけど、新品で書籍として購入できるものはAmazonで見た限りは本当にわずかで、メディアに出なくなってしまうとそんなものなのかな。
なんだか寂しい。とりあえず入手出来るものを購入する。
カツ代先生は「押さえるところはきちんと押さえるけど、抜けるとこは抜いちゃう。」
そういう感じの料理法を伝えてくれた。
私の母は完璧主義的なところがあり、「料理=母の手料理」という発想しか持っていない若かった私は料理に対してたぶん構えている所があったが、その点でもカツ代先生には随分救われたと思う。
本を買った後、ある日偶然テレビで観た料理番組で、初めて動くカツ代先生を見た。
「こんなのはねー、結構適当に混ぜちゃっていいのよー。」と、ニコニコ笑いながら、手早く下ごしらえを済ませている姿には気持ちが楽になった。
さらに時は経って、何かのテレビ番組で「大事に飼っていたペットのニワトリが亡くなった。喪に服すために一年鶏肉は食べない!」というような話をしていたのも印象に残っている。泣いてはいなかったが本当に悲しそうだった。
自分の母親の他にも影響を受けた女性は何人かいるが、カツ代先生もその一人。
私にとってもうひとりのお母さんのような存在だ。
明るくて正直でパワフルな姿には憧れた。
お母さんって、なんだか勝手な話だけれども。
それからずっと年月が経って、料理も人並みに出来るようになり、カツ代先生のものに限らず料理本を開く事も少なくなった。
でも、ボロボロになっても処分するつもりもなく最初に買った本はまだ手元にある。
いつかまたカツ代先生の姿を見られると良いなと思っていただけに、今回の訃報は本当にショックだ。しかしまた明日が来る。食べて働いて眠らなければならない。明日は「母さんオムレツ」を作ろう。
先生、ニワトリちゃんとは会えたでしょうか?
どうか安らかにお休み下さい。
色々ありがとうございました。